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2006年10月28日

当然の主張

夜の住宅街でロケを敢行する時、まず気をつけなければならないのは、撮影の際に発せられる騒音です。

撮影が夜間に及ぶ場合は、これらを抑える事は当然撮影隊の義務となります。

ある夜の住宅街での事。

多くの住民が既に帰宅し始めているアパートの2階でロケ中の撮影隊は、事もあろうにベランダ際の窓を開けて大声でこう叫んでいました。

「はい回った! よ〜い、スタート!!」

この掛け声は、カメラのVTRが回った際に、主に助監督等の演出部が言う言葉です。

このような声を出す事は、芝居をする役者その他のスタッフが、撮影に対してより一層の緊張感を持って望む心の準備として絶対に必要なもので、それが大きければ大きい程、“良し”とされる、いわば〔大声=業界の伝統〕な訳なんですね。

そしてこの日もその言葉を中心に、色々な会話が外で待機中の我々の耳にも聞こえて来たのです。

「テスト!」

「本番!」

「かぁっとぉぉー!」


これらはまさにロケ隊大声の三種の神器。 常に気を張って仕事をしているというロケ隊の意気込みなのです。

そんなベランダで大声を出す助監督から、こんな事を言われました。

「次本番だから、隣りの家の前でエンジン掛けたままになっている車を静かにさせてね。」

なるほど、ベランダの窓が開いているから、外の音がよく聞こえる訳だ。

早速制作部が対応します。 エンジン音は直ぐに収まり、運転していた隣りの家の主人(息子?)も、その場は穏やかに応対し、何事も無かったかのように思えました。

しかし数分後、この隣りのご主人(息子?)は急に腹が立ったのでしょう。 おもむろに家を出て来て、丁寧な口調でこう言い始めたのです。

「撮影するならするで前もってこちらにも連絡するのが筋じゃないですか? そもそもそちらが勝手にここで撮影をしていて大声を出して、しかもこの辺に止まっている車両とかも皆そうですよね? なのにずっと前からここに住んでいる僕等が、ちょっと車入れ替える為に止めてただけなのに、なんで「うるさい」とか言われなきゃならないんですか。 そりゃ改造車なら別ですよ。 でもこのマフラーだってノーマルですし車検だって通りますから。 特にうるさい訳じゃないんですよ。 しかも自分の家の横に止めてですよ。 あなたたちみたいな余所者にうるさいとか言われる筋合いはないと思うんですけど。 こっちは疲れて帰って来て、家の前で勝手にこんな事されてて… うるさいのはそっちの方じゃないですか。」

いやごもっとも…

多少の脚色はあるかもしれませんが(笑)、大体こんな事を制作部は言われておりました。

確かに夜の住宅街で、窓を開けて大声を出し、しかもその界隈には数十台の路上駐車車両。 これは十分に苦情を言う権利が発生します。 なのに、この隣りの家の主人(息子?)は、自分の家の前で、車を入れ替える為に止めていただけなのに、「うるさいので…」(少し違う言い方かも知れませんが)とまで言われてしまったのです。

そりゃ誰だって、怒りますわな。 当然の主張だと思います。

それよりも、夜の住宅街でロケをするスタッフへ一言。


お静かに!


いえ…


静かにしろ!!
posted by piyota at 23:02| 東京 ????| Comment(2) | TrackBack(0) | ロケ日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月23日

ただの通りすがりが見たものは

ロケ終了後、スタッフを新宿の駅まで送って行った時の事。

皆を駅で降ろし、大通りを足早に我が社の事務所方向へ向っていると、突然後方よりけたたましいサイレン音が鳴り響いてきました。

帰宅ラッシュの渋滞をすり抜けて来たその真っ赤なサイレンの主は、瞬く間にロケバスの横を通り抜けると、目前に広がる火災らしき現場へと急行して行ったのです。

更に数十メートル先の交差点では、Uターンをしようとしているハシゴ車の姿。

そう、僕はまさに火災らしき現場の真っ直中にいたのでした。

そのお陰で帰宅ルートは大渋滞。 なんせ4車線中2車線を潰して消防車が列を成しているのですから。

いや、ちょっと待てよ。

どうやら消防車の列は、2車線目に2重駐車をしているのみ。 更に止め場所を探して別の消防車数台が右往左往しているではありませんか。

何故に消防車たちは2重駐車をし、駐車場所探しを余儀なくされたのでしょうか。



よく見ると、火災現場と思われるビルの前には人だかりが出来ていました。 それはそうでしょう、やはり火災現場には野次馬が付き物…

いや、どうやらそうではないようです。 その野次馬らしき人々は頭にタオルを巻いたり、腰からジャラジャラ工具をぶら下げたり、手にはカチンコ、歩道上にはイスや機材を並べた… おお、これはまさにロケ隊の姿ではないかぁ!(わざとらしい)

という事は、これは撮影?

いいえ。 さすがに消防車両数十台、帰宅ラッシュの新宿付近で、そのような大胆な撮影が可能な筈はありません。 これは正真正銘の火災であったのです。

つまり歩道上の人々は、撮影中断をさせられた不幸なロケ隊だった訳です。

歩道上には無惨にも放置された照明用タワーイントレ。 そして歩道から横断歩道上を撮影しようとでもしたのか、こちらを向いたままのカメラ横で、唖然と消防士たちの姿を傍観するカメラマン他スタッフたちがおりました。

歩道上はその後、火災通報で駆けつけた消防関係者たちでごった返していったのでした。

ごった返すといえば、2重駐車を余儀なくされた消防車たちの行方…

つまりこういう事です。 消防車が現場に近付けない理由。 それは、まず先にロケ関係車両が車道の1列目を陣取っていたからなんです。 囲まれたロケ車両はドライバーたちを乗せたまま、消防車に囲まれた状態で身動きが取れません。 例え消防士の誘導でその場を離れられたとしても、その他には、なんと、およそ2tトラック2台分もあるであろう、照明機材用のカーゴが数メートルにも渡って放置されていたのですよ。

映画等の撮影では、照明機材の量が半端ではありません。 更に、いつどんな機材を使うか分からない為、トラックに積んである機材を全て降ろしておく習性があるんですね。 大抵は降ろした機材を置くスペースが確保されるものなのですが、よりによって今回は、火災現場前の路上に放置されてしまっていたのです。 この為、消防車が停め場所を探して右往左往していた訳なんですね。

恐らく何もなければ、何もなかったかのように、当然みたいに路上に放置していた照明機材用のカーゴ。

ですが多分、この日の一件で、照明機材用のカーゴの置き場所や車両の止め位置を改めて考え直すよう打診した番組制作者はいなかったと思います。

何故ならそれがロケ隊だからです。

この日僕が、この一件を目撃していた時間は恐らく通過中の3分もなかったでしょう。

なのに、これだけの憶測が可能だったのは、並んだ消防車を見ても、ただ呆然として車や機材を動かさず、「ヨーイ!」の掛け声を待ち続ける『wait』状態のロケ隊の姿に、その全てが集約されていたように感じられたからです。

例えどんな障害がロケ隊を襲おうとも、その番組の責任者もしくはトップがそうと言わなければ、自分から行動を起こす事さえ許されないロケ隊のスタッフたち。

僕は、ただ通り過ぎる事しか出来ませんでした。
posted by piyota at 23:16| 東京 ?J| Comment(6) | TrackBack(0) | ロケ日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月20日

通報されるということ

住宅街でのロケが多かった今回の組において、レギュラーとなったとある地域は、予め番組名やロケを行う旨を記したチラシを近隣住民に配付しておいたお陰で、クレームや苦情等のトラブルは一切ありませんでした。

このように、これら対象の地域に前もって対策を施すという行為は、一般市民のロケに対する不信感を少しでも取り除く事が出来る他、スムーズなロケ進行を行う上でも、必ずやっておくべき措置なんですね。

しかし大抵のロケの場合は、道路使用許可書のみを振りかざしたイタチごっこの繰り返しで、許可があるだの、通報するだのと、結局ロケ隊対住民の後味の悪い戦いとなってしまったりするのです。

この場合、勿論道路使用許可だけではスムーズにロケが行える筈もなく、やはり地域住民の協力あってこそ、初めて成り立つものであるという事を改めて再認識しなければならないのです。

そんな訳で、今回のロケの最大のヤマ場となる地方ロケが行われました。

このロケは、とある地方の施設を貸切りで行う為、我々スタッフは2泊3日の宿泊だったのですね。

そこで今回は、わざわざ全スタッフの為に、予め宿泊案内なるチラシを配付したのです。

それは勿論、宿泊に対するロケ隊のわがままや混乱を前もって制御する為で、住宅街でのロケ同様、そうする事によって我がスタッフサイドもスムーズな宿泊体制が取れる筈だと思ったからです。

宿泊案内−

○宿泊先

○ホテル担当者名

○宿泊期間(チェックアウト日)

等の概要があり、以下注意事項が続きます。

@ 宿泊備品の有無

A ルームキーの返却徹底

B 食事時間厳守

C 浴室トイレ使用用途

D 周辺のコンビニ有無

E 各部屋基本宿泊人数のお願い

F 大浴場の時間制限について

G 防寒着の準備


以上が宿泊案内の基本的な部分。 そしてこの後太字でこのような注意書きがありました。

《※ 一般の宿泊客の迷惑にならないよう、深夜の部屋での歓談は音量注意!のこと》 制作部

つまりロケ隊は、一般市民の協力を得る為に、まず自らがこれらのチラシをよく読み、率先してその指示や書かれた事に納得をして理解と行動をしなければならないんですよね。

そしてこの宿泊日の夜を迎え…

次の日が早朝4時半の出発という事もあり、誰もが早く床につき、皆が何事も問題を起こさず、すんなりと行くかに思われました。しかしその思惑も束の間、とある撮影部の部屋から、酔った勢いでのバカ笑いが響いてきたのです。

しかも最悪な事に、自分の部屋の隣り。 枕を置いた壁際の、その壁越しに怒濤の勢いで聞こえてくるのです。

更にそれは、撮影、照明、録音等の技術パートが合同で、御丁寧に部屋のドアまで開けて行われていたのですよ。

事もあろうに一般の宿泊客が混在する公共の施設の中で…

という事は、前もって配られていたチラシは、誰も目を通していないという事。 つまり残念ながら、この制作サイドの意図がスタッフには全然伝わっていなかったのです。

全くロケ隊というものは…

しかし数分後、その技術パート飲み会は解散を余儀なくされました。

どうやら隣りの部屋からそのチラシを作成した制作担当へ通報があったようなんですよね。d(^。^)

いや、それにしてもロケ隊は通報され好きです。

そもそも通報される側には、通報されてしまうだけの理由があります。 ですがそれを回避する事も絶対に可能な筈なのです。

ただちょっと、日本語を理解する能力がありさえすれば…

一般の方々のように。
posted by piyota at 20:08| 東京 ??| Comment(4) | TrackBack(0) | ロケ日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月17日

本末転倒

【本末転倒】…根本的な事柄とささいな事柄とを取り違えること。

この言葉がピタリと当てはまる出来事が先日ありました。

この日のロケは、その第2現場である公共の施設で、開始時間、そして終了時間共に完全な制約がありました。

ですが、事もあろうに第1現場で約1時間半も押してしまったのです。

ということは、早く次の現場に行かなければならないというのが現場スタッフに課せられた義務ということになります。

しかもその公共施設は、容易に撮影許可が下りる代物ではありませんので、この日中に何としても撮りきらなくてはならないという、演出、制作サイドの思惑があったのです。

撮りきれなければ、当然後日という事になります。 後日という事は、勿論日程が増える上に、スタッフやキャスト、借りている品物や撮影照明機材等のギャラや費用がかさむという事になる訳ですね。

そしてこれらを節約するよう口出しするのが、当然制作会社やプロデューサー等の大蔵省なんですよ。

ですが、その第1現場が終わって移動しなければならないにも関わらず、その制作会社のプロデューサーは、別クルーを使って主役達とまったり番宣番組を撮影しているではありませんか!

現場は当然、それが終わるまで次の展開が出来ません。

結局、しっかりと時間を割いて番宣番組は撮影されました。

時既に、第2現場開始時刻をとっくに過ぎた頃。更に第2現場までは約45分の道程。 という訳でこのロスを取り返す為に、また車両部が危険を犯さなければならなくなってしまったのです。

それにしても、この番組のプロデューサーは何をしたいんでしょうか。

事実、本編が撮り切れてないうちに番宣番組を撮っているのですから、目もあてられません。

そして案の定、この日のスケジュールを消化する事は出来ませんでした。 つまり予想通り、この日撮れなかった分は後日に回されてしまったのです。

まさに本末転倒とは、この事です。

だって、本編のない番宣番組なのですから(笑)
posted by piyota at 18:50| 東京 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | ロケ日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月13日

ビッグハート

今年も健康診断の季節がやってきました。

我が社の健康診断といえば、あのコスプレ系看護士がいる病院ですが、残念な事に、僕が診断に訪れた日が土曜という事もあり、結局今年は、彼女らの姿を拝む事は出来ませんでした。

今年こそは、あの黄色のナース服を見ようと思ったのに…

しかしそんな僕に病院からの呼び出しがあったのは、診断を受けた日からおよそ2週間後。

なんと診断結果に問題があるというではありませんか。

ということは、もう一度病院へ訪れるチャンス…

ですが問題が発見されたのは、レントゲンと心電図のダブルということで実は深刻。 《心陰影拡大》と書かれたその診断書を見た僕は、何事かと思い、まずはネットでその言葉を探してみたのです。

『難病』

『今のところ主だった治療法なし』

『5年以内の寿命の確率が70%…』

つまり、はっきり言って、かなりヤバそうな状態らしいのです。

そんなこんなで健康診断を受けた病院で再び診察してもらうことに。

6畳程の診察室へ入ると、前回の健康診断よりも1人多い、先生を含む3人もの人間が、僕を取り囲みました。 話の内容としてはただ、この病院では詳しい診断と精密検査をする事が出来ないので、近くの大きな病院への紹介状を書いてくれるというもの。 ただそれだけの為に3人もの人間が取り囲むというのは、何となくただごとではない… 気がしました。

せっかく黄色のナース服が拝めたというのに…何だかちっとも嬉しくありません。

そして後日、その紹介状を持って大きな病院へ行き、改めて精密検査を受ける事となりました。

正直言いますと、診断書を貰ってからの僕は、内心穏やかではありませんでした。 勿論、家族の事や将来の事、保険の事や身辺整理の事まで、今までに味わった事のない苦痛が頭の中を駆け巡りました。 ちょっとした事で心臓の辺りが痛く感じたり、今まで感じた痛みの原因が全てそこから来たのではないかと感じてしまったり… 余計な事ばかり想像してしまっていたのです。

大きな病院へ入ると、まずは循環器内科へと通されました。 そこで再びレントゲンと心電図をとり、新たな先生の診断を受ける事になります。

「まず…心臓が大きいですねぇ。 原因は色々あるとは思いますが、例えば心臓内に水が溜っていたりとか…」

「後で採血と心蔵を超音波で見る“心エコー”というのをやりますから、結果が出次第、後日改めて診察しに来て下さい」

結局その日は、これはという結果が出ませんでした。 ただ大病院は時間だけが無駄に掛かるもんだなぁということだけは、皮肉にも理解出来たのです。

診断結果が出るまでの間はというと、とりあえず通常通り働かされました(笑)

最悪の事態だけは有り得ないでしょう、ということのみ医師からは伝えられていたので、その言葉だけを糧に働き続けたのです。

そしてついに診断結果が出ました。

心電図、心エコー共に問題なし。 レントゲンではやはり心臓が人より大きいというのは分かりますが、ようは心臓の筋肉が人より厚めに出来ているらしいのですね。

恐らく《心陰影拡大》という診断で考えられる症状の中でも、最も軽いとされるもので、今回は運良く収まってくれたようでした。

まさに病名無し、治療薬無し、の不思議な病とでも言いましょうか…

とりあえず事無きを得たのです。

ドライバーという職業は体力勝負です。 それなのに我が社では、最近やっと健康診断が行える環境が整いました。 社員ドライバーですら、このような状態なのですから、恐らくフリードライバーの皆さんは、もっと無理をしているのではないかと思われます。

これらを踏まえて、健康診断を定期的に受ける事をお勧めします。

これは人よりハートの大きい(情が厚い…)、僕からの言葉です。
posted by piyota at 14:19| 東京 ????| Comment(6) | TrackBack(0) | ひとり言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月11日

撮影特機の行方

ドラマのロケ等で使われる撮影用の特機といえば、通常ドアウェイドリーと呼ばれる移動車と、イントレと呼ばれる、人やカメラ等が載る足場(台)があげられます。

移動車は通称キャデラック(由来は?)と呼ばれ、アルミタイプのレールの上を、電車のように直線や曲線を動くものと、ゴム製のタイヤで、車のように縦横無尽に駆け回る事が出来るものとが、車輪の着脱のみで入れ替えられるタイプを使用し、これにカメラやカメラマンを載せて移動しながら撮影をします。

イントレとは、確か初めてその台を使った映画から取った名称と記憶していますが、色々なサイズがあり、ロケバスの上に載るサイズとして、主に高さが3尺5尺のものを使用し、俯瞰からの撮影をする時等に利用します。

また映画のように大掛かりなロケになると、特機の量や種類も段々と増えてきますので、ロケバスには載せず、特機専用の車両が随時帯同する事となります。

以上のように撮影特機は、ドラマや映画のロケにおいて必要不可欠であるものだと理解することが出来ますよね。

ですが今回のスペシャルドラマにおいては、この常識が見事に覆されてしまったのです。

テレビドラマの場合、特機は主にロケバスがそれぞれの特機会社にピックアップに行く事になります。

そしてそれは、ロケがクランクインをする前日に衣裳やメイク道具を積み込むのと同時に行なうのですね。

ですが今回僕は、クランクインの前日に別の予定があり、積み込みだけを別のドライバーにお願いしたのですよ。

そしてクランクインの当日、第1現場で移動車を使う事となり、ふとロケバスの上を見たところ、なんと、ある筈の撮影特機が全く見当たらなかったのです。

こんな事は初めてでした。 それは通常のテレビドラマのロケでは、ロケバスに特機があるのが当たり前であったからです。

現場からは、「レール3本半!」という声が聞こえてきます。 でもそれが見当たりません。

もしやと思い、バスの後ろを開けてみると、何やら黒い塊の袋が2つとジュラルミンのケースが2つ。

まさか、これ?

通常僕らがドラマで使うレールや移動車は、アルミもしくは鉄製で、どんなに折り畳んでも、車内に乗員と一緒に載せる事はほぼ不可能な大きさです。

でもバスの中の品物は、小さい上にとても軽く、考え得る撮影特機の常識を遥かに超えていたのです。

まさか、これが…

でも確かにそれは移動車でした。 レールはプラスチック性で一本ずつ独立しており、それを同じプラスチック性の枕木にはめこんで組み立てるシステムです。 一方移動車は、ジュラルミンのケースを開いた状態に車輪を付けるというコンパクトな仕様。 確かにバスの車内に積み込む事が可能で、これはなかなか画期的なものであるような気がしました。 

まぁ最初のうちは…

で、実際の能力と現場の反応はといいますと、制作会社関係者と(制作部は除く)、今回がドラマロケ初となる撮影部を除いては、残念ながら失笑の対象であったのです。

移動車というものは、カメラが安定せねば意味がないのですが、このプラレールは、移動車を上に置くだけで反り返ってしまいます。 また軽い為に、移動車を押すだけでレールごと動いてしまったのです(室内使用)。

「なんじゃこれは!」

無理もありません、これを外で使うとなれば、ちょっとした強風で吹き飛ぶような軽さなのですから。

よって、この玩具のような移動車は即NG。 しかも現場に更なる衝撃。

「イントレは?」

「ありません」

「イントレだよ」

「積んでませんよ」

「なんで?」

「借りる金が無いそうです」

「あ〜 そう…」

そうなんです。 この組実は、特機を借りられなかったのです。


「えっ! 移動車もイントレも無いの?」と、監督を含む現場のメインスタッフ。

結局イン3日目、制作会社を説得して、改めて通常の撮影特機をロケバスに積み込みました。

予算を削ろうとする努力…

その方向は、もう少し別にあるような気がします。
posted by piyota at 10:31| 東京 ????| Comment(4) | TrackBack(0) | ロケ日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月08日

追跡者たち

現在ロケ中のスペシャルドラマがクランクインする直前の事。

今回の主役である男性アイドルグループ2人が、都内某所で衣裳合わせをした後、その番組宣伝用ポスター撮りをするというので、その送迎をする為、今回の衣裳を担当する○○衣裳という会社の前に集合しました。

衣裳合わせとは、出演する役者に前もって色々な衣裳を着てもらい、監督や本人のイメージに合う物を選んだり、またサイズ調整をする為に一度袖を通してもらうもので、映画やドラマの撮影前には必ず行われるものなんですね。

そして今回は、忙しいスケジュールの合間を縫って現れた主役2人を、そのままスチールロケへと連れ出し、ついでにポスターまで撮ってしまおうというものだったのですよ。

つまりドラマ作りの一部とはいえ、ロケそのもの自体は非常に地味なものであった訳なんです。

15人乗りの僕の車には、役者2人、衣裳とメイクが各1人、更にテレビ局のプロデューサー、制作会社のプロデューサーとアシスタントプロデューサーが各1人の計7人が乗り、スチールカメラマンは、現場で先乗りして準備中との事でなので、とりあえず○○衣裳からは、僕の車1台だけの出発となったのです。

その出発間際、僕のすぐ後ろに一台のタクシーが止まりました。 僕の方は、それ程急いでもいなかったので、そのタクシーを先に出させようと少々待機したのですが、いっこうに出発する気配が無かったので、じゃあ…ということで、車をゆっくりスタートさせました。

その瞬間、後ろに止まっていたタクシーが急発進をしてきたのです。 まるで後続車を制すように、僕よりも先に車道へ出、勢いだけではまるで、僕よりも前へ行こうとしているような感じだったのです。

本当は鈍いこの車よりも前に出たかったに違いない。 そう思ったので、広い大通りに出てからは常に右側の車線を走り、いつでもハイどうぞという体制を整えておきました。

ですが、そのタクシーは、ピタリと僕の後ろに食い付いて全く離れません。 車線まで常に同じルートを選択していたのです。

これはもしかして関係者の乗車している車か?

衣裳合わせとか、初めて主役が現れる日というのは、得てして現場関係者以外の人々が多く顔を出すもの。

きっと今回も、テレビ局もしくは制作会社もしくはタレント事務所関係の大物が、現場見学兼営業を兼ねて付いて来ていたのでしょう。

僕はその後、あえてスピードを緩め、そのタクシーを引っ張るように走り続けたのです。

撮影現場である公園内は、許可された車両のみの通行が可能で、僕の車は難なくその敷地へと進む事が出来ました。 そして当然のようにタクシーも敷地へと進入してきます。

現場へ着くと、早速役者、スタッフ共々、撮影の準備の為降り立ちます。

そして気になるタクシーから降り立った大物関係者が…

大物関係者が…



なんと降り立ったのは中学生位の女の子が2人!!

その2人組がタクシーの料金を支払っているではありませんか。

つまりこれは文字通り追っかけの乗ったタクシーだったのです。

それにしても何たるや執念。

いや驚くのは、彼女らが付いて来たのは、これが正式なドラマのロケではなく、単なる衣裳合わせついでのスチールロケだということ。

一体どんな情報網なのでしょう。 僕らの会社ですら前日の夕方に引き受けた仕事だというのに…

結局、彼女らは撮影半ばにして、トボトボと帰路につきました。 タクシーで来た今回の現場は、東京湾の埋め立て地内にあり、交通の便は、あまりよくないところです。
一体どうやって帰ってたのか、我ながら心配してしまいました。

それにしてもその情熱、少し分けて欲しいものです(笑)
posted by piyota at 12:42| 東京 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | ロケ日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月04日

重要文化財は何が重要か?

とある某大国の大きな陰謀のように、その嘘や行動が大胆であればある程、人々はそれが常識であると信じてしまうようです。

そしてそれは某小国の某ロケ隊にも当てはまるようで、先日のロケハン中にも某メインスタッフたちによって、大胆なる行動の裏側が語られておりました。

見逃してしまいがちな、ロケ現場での小さな非常識は沢山あります。 それは例えば、タバコの投げ捨てに始まり、ゴミの置き去り、早朝深夜の騒音、歩道上における一般人の通行妨害等、このような“その程度なら系”は何度も何度も繰り返し報告してきました。

しかしこれらの非常識はロケ隊にとってほんの序の口です。 何しろそんな小さな事は、気にもならない位、大胆な行動をするのがロケ隊の常識なのですから…


《ケース1》

とある大豪邸でのロケ中、そこの奥様と打ち合わせ中の制作担当が、その奥様よりこんな事を言われました。

「あの方は、何をしているのでしょうか…」

よく見ると、大きな庭の片隅で、家の窓に掛かる木の枝をノコギリで伐採しようとしている美術部の姿。 監督かカメラマンに「窓外の視界を確保するように」とでも言われたのか、事もあろうに庭の木を切り落とそうとしていたのです。 ここで改めて確認しますが、これは主人や制作サイドには無許可であり、現場のスタッフが勝手にやっている事なんです。

しかしさすがは大豪邸の奥様。 「元に戻してくれればいいわ」と、心のゆとりを見せてくれましたが、それにしてもあまりに大胆な犯行。 きっと奥様も「あの方は何を…」としか言いようがなかったんだと思います。

《ケース2》

重要文化財といえば、勿論歴史的に見て重要なものであり、国単位で守らなければならない程の建物だという事は、小学生でさえ分かるもの。

しかもそれが京都のものであれば、世界的な視野で考えても、その価値は計り知れないものであるというのは当然ですよね。

しかし撮影に関しては寛大な京都市は、大胆にもその重要文化財である仏閣をロケで貸してくれました。

ですがロケ隊は、その恩を仇で返したのです。

数百年の歴史を刻んだ、長い長い渡り廊下。 そんな貴重な廊下にキズが付かないよう毛布を敷いたロケ隊は、なんとその毛布が動かないようにと、事もあろうにガムテープで張り付けてしまったのです。

結果は予想通り、数メートルにも及ぶガムテープの跡。 その粘着力は数百年にも及ぶ歴史の色を見るも無惨に剥ぎ取ってしまったのでした。

当然、その場所でのロケは、その後一切行われていない… という話です。

《ケース3》

ある制作担当が、やはり由緒あるお寺さんへ、ロケ交渉へ行った時の事。

少しでもスムーズに交渉する為、まずはと思い、その敷地の入口に建つ立派な鳥居を褒めたのだそうです。

「この朱色は、いい味出してますね! 歴史の重みを感じます」と言ってみたり。

すると、

「ああ、前に○○プロダクションのロケで貸した時に、勝手に塗られたんだよ」と言われたそうです。

ああ、なら綺麗な筈だ… って、おい!

大胆であればある程、人はそれを間違いであるとは気付かぬようです。

ワー○ドトレードセ○ターのテロでさえ、某大国の陰謀であると囁かれている昨今、もはやロケ隊ぐるみの陰謀は、常識と化しているかも知れません。
posted by piyota at 12:40| 東京 ?J| Comment(2) | TrackBack(0) | ひとり言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする