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2007年06月09日

監督の憂鬱

監督は現場にとって、とても重要且つ厄介?な存在です。

それもその筈、監督は現場に関わる全ての責務を果たさなければならない他、その発する一言により、およそ50人はいるであろう関係各者各所に多大なる影響を与えるからです。

つまりそんな存在だからこそ、作品期間中は精神的、そして体力的にも優遇されて当然の権利が許されており、場合によっては、いわゆる監督専用の厚待遇で対応するようになっている訳です。(厳密に言いますと、その辺は監督の人柄や制作会社の方針によりけりです)

話はちょっと遡りますが、前回の地方ロケでのこと。

なんと、そんな監督が、移動時のロケバスの座席にちょこんと座っていたのです。 しかも地方ロケ独特の満員御礼札止め予定のロケバスに、誰よりも早く現れたかと思うと、その窮屈な座席の隅に身体を小さくして収まってしまったのです。
通常このようなドラマロケの場合、監督は監督車やメイン車等を専用車両として用意され、本隊(ロケバス)よりも先に出発した後、現場にて色々な段取りを指示するものなのですが、今回のような地方ロケでは車両にかかる予算の都合で専用車両が用意されず、他の準備パートやスタッフたちと共に移動となってしまう場合も無きにしも非ずです。

しかもこちらの監督、実は相当なせっかちとして名の知られたお方で、監督車等で現場に着くや否や、後に到着する機材や照明の各車両や最後に到着するロケバスに対しても、自ら「あっちだ!こっちだ!」と、止め位置まで指示を出してしまうような逸話があるお方なのです。

さてそんな監督が乗ったロケバスは当然初日の朝からてんやわんや。

地方ロケですから皆同じホテル出発、勿論メイクや着替え等の支度はホテルになりますから、ロケバスはそれらの準備班を乗せてから出発となります。

なのに出発予定時刻10分前頃からにわかにイライラしだした監督が、ドアのところへ身を乗り出すと、「早く乗りなさい!」と、車外にて雑談しているスタッフを一括し始めたのです。

ですがメイク準備班が未だ来ておらず、その為出発することは出来ません。

更にそのまま待機の状態でいると、今度は5分前になって、僕に「もう出して下さい!」と言ってきたのです。 勿論車外にいた制作部は必死に×印を出しています。 しかし監督の方はお構いなしに「私の現場では3分前にバスに乗っていないのは置いて行く!」「いいからバスを出して下さい!!」と強くも尚、冷静な指示をだしてきたのです。

制作部は制作部で「もう乗れる車が無いんですよ…」と再び発進を食止めます。

板挟みの僕はとりあえず、ギアを入れて動き出し、道路にバスの半分を突き出したいつでも出発できる態勢を作って再びバスを止め、お互いの中立を保つことに終始しました…

後から聞いた話ですが、実は監督車を用意しなかったのは、せっかちな監督が先に着いた現場で「本隊はまだか!遅い!!」とイライラさせない為の意図的なもので、ロケバスに乗せることによって他の技術や美術パートの準備に掛かる時間的余裕を稼ぐというのが本来の狙いだったらしいのです。

さて、これでめでたしめでたし、皆が幸せ、現場に束の間の平和が訪れることでしょう。

いや、待てよ…

制作は監督をゆっくり連れて来てと言い、監督は急ぎなさいという空気を僕に浴びせます。

あれ、なんだかちょっと一人負けした気分。

僕は今回の現場で、急いでいるようで、ゆっくり向かうという、究極の移動技術を学んだような、そんな気がしたのでした。
posted by piyota at 08:52| 東京 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | ロケ日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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